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海外で注目!?【低炭水化物高脂質食のメリット・デメリット】
2019.05.14(更新日2019.05.22)

低炭水化物高脂質食(LCHF食)の一例

一般的な日本食というと、

ごはん+主菜+副菜2品+汁もの

の一汁三菜スタイルでしょうか。

 

一般的な日本食は、エネルギー摂取量に占める炭水化物の割合が約60%、たんぱく質が20%、脂質が20%程度となります。

 

アスリートの食事においては、摂取エネルギー量は多くなりますが、炭水化物、たんぱく質、脂質の比率は大きく変わりません。

 

しかし、近年、競技力の向上を目指したアスリートが、

低炭水化物高脂質食(Low Carb Hight Fat diet:LCHF diet)

に取り組んでいることもあります。

 

「何それ?そんな食事法、初めて聞いた!」

という方が多いかもしれません。

 

私も、かつては、高脂質食とアスリートの食事が結びつかずにいましたが、2016年から、オーストラリア国立スポーツセンターの研究に携わらせていただき、日本では馴染みのない食事戦略についても、理解が深まってきました。

 

アスリートを被験者とした研究の中で、様々な食事法と栄養戦略が検証されていましたが、特に興味深かったものが、低炭水化物高脂質(LCHF)食です。

 

また、最近、LCHF食についての質問をいただく機会も増えました。

そこで、今回は、アスリートが実践しているLCHF食の一部をご紹介したいと思います。

 

1)LCHF食の一例

(総エネルギー摂取量に占める脂質の割合が70%以上の食事の場合)

 

高脂質食と言っても、ただ単に脂質の多い食品を食べるということではありません。

まず、脂質の種類を考える必要があります。

 

脂質の種類とその食品については、前回のコラムでお伝えしておりました。

ご確認ください。

>>>【アスリートに良い油!?】脂質を上手く利用するコンディショニング!

 

LCHF食では、飽和脂肪酸である動物性脂は極力避けて、不飽和脂肪酸である植物性油や魚油を中心に摂取します。

日本ではあまり馴染みのない食事法ですが、海外のアスリート(特に持久系種目)が、脂質代謝を高めることを目的とし、取り組んでいます。

 

2)脂質代謝を高めるLCHF食の考え方

「脂質代謝を高める」とは、脂質を燃やしやすい体質にするということです。

競技中に脂質を優先的に燃焼することで、競技後半に糖質(エネルギー源)を残すことができるため、持久力UPが期待されます。

 

◆LCHF食の欠点

LCHF食の欠点としては、脂質の摂取量が多いため、消化吸収に負担がかかることです。

また、高脂質食への適応には、個人差があります。

 

特に、日本人アスリートは、日本食に慣れているため、高脂質食に適応中に、下痢になったり、体調を崩すケースが多かったことも事実です。

そのため、脂質適応中には、強度の高いトレーニングを行えなくなることも、しばしばあるのです。

 

先行研究においては、脂質代謝は高まったが、レースタイムが落ちた、という例も紹介されています1)

 

まとめ

海外で注目されている食事法の一つではありますが、上手く適応できるかについては、個人の体質によります。

 

日本人は、高脂質食への適応が容易ではありませんので、積極的におすすめはできませんが、どうしても試してみたいという方は、大事な試合の前は避け、トレーニング期に取り組んでみても良いかもしれません。

また、実施する際は、食事によるエネルギー源を炭水化物から脂質へと徐々に移し、脂質適応を促すと良いでしょう。

 

こういった方法でパフォーマンスを管理する食事方法があるということを、知識情報としてご紹介してみました。

 

河村

参考にしてみてくださいね。

 

1)Burke ML et al.,Low carbohydrate, high fat diet impairs exercise economy and negates the performance benefit from intensified training in elite race walkers, J Physiol.,

 

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河村亜希

・管理栄養士・公認スポーツ栄養士・IOC Diploma in Sports Nutrition・オーストラリア国立スポーツセンター(AIS)アシスタントスタッフ(2016年~)・全日本スキー連盟ハイパフォーマンスサポートスタッフ(2016~2018年)・日本バレーボール協会 医科学スタッフ(2017~2021年)・日本スケート連盟フィギュアスケート部医科学スタッフ(2020年~現在)などの日本代表チームに対する栄養サポート経験等を経て、現在は大学で研究活動にも取り組んでいる。

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