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【暑さに体をならす ~夏本番を迎える前からの暑熱順化が重要~】
2022.06.15(更新日2022.08.23)

 

梅雨明けの時期は、比較的冷涼な天候から一気に高温多湿な天候に変化します。

このような季節の変わり目には、多くの人が十分に暑さに慣れておらず、汗が上手くかけません。

そのため、気温は真夏ほど高くないのに、身体がだるかったり、運動時に不調を感じたりします。

そのため、春から夏にかけては、パフォーマンスを高めることに加え、十分な熱中症予防も必要です。

実際、暑さ指数(WBGT)が28℃を超える梅雨明け頃から熱中症リスクが高くなります1)

 

では、夏本番に向けて、どのように体調やパフォーマンスを高めていけばよいのでしょうか。

一案として、夏前から暑さに体をならす(=暑熱順化する)ことが役に立つかもしれません。

 

今回は、「暑熱順化」の重要性と方法をお伝えします。

 

①暑熱順化の重要性

毎日、暑いところで活動をしていると、上手に汗がかけるようになります。

運動中にも自然に沢山の汗をかくことができます。

このような体の適応を暑熱順化と言います。

この順化により、外気温が高くても急な体温上昇が防がれ、運動中のパフォーマンスがある程度は維持できます。

しかし、季節の変わり目や、寒冷な地域から気温の高い地域に移動した時などは、体が十分に順化していないため、何らかの方法で暑さに体を慣らしておく必要があります。

 

②運動・スポーツのための暑熱順化法はあるのか?

国際オリンピック委員会(IOC)が、東京五輪に向けた暑熱対策に関する指針(Beat The Heat during the Olympic Games Tokyo 2020, IOC, 2019)を発表しました。

この指針では、パフォーマンスを最適化し、熱中症のリスクを軽減するための推奨事項が10箇条にまとめられています。

この指針の内容は、オリンピック選手のみならず、運動やスポーツをする方が参考にできる部分もありますので、今回は、いくつかの方法をご紹介します。

 

③暑熱順化にはどのくらいの期間が必要か?

暑さに体が順化するには、7から10日が必要とされており、2週間以上の暑熱順化が推奨されています。

しかし、2週間も順化する期間がないという場合は、少なくとも1週間行いましょう。

 

④暑熱順化するための具体的な方法は?

1)屋外で毎日、60分以上(~90分程度)のトレーニング

屋外での運動・トレーニングにより、体温を上げることが目的です。

低強度の運動から少しずつ強度・時間を増やしていき、決して無理をしないようにしましょう。

 

2)屋内トレーニング(屋外でのトレーニングが難しい場合)

屋内でも、運動することで体温が上昇します。

可能であれば、部屋の温度や湿度を高めて、屋外により近い環境を作れると良いでしょう。

 

3)入浴も効果的

トレーニング前後で、40℃前後のお風呂かサウナに30~60分程度入ることを目安にしましょう。

1度に時間が取れない方は、2回に分けてもOKです(例:30分を2回など)

30分は長すぎる、という方は1015分程度でもしっかり肩まで浸かりましょう。

その日の自分の体調に合わせて、決して無理をしないことも大事です。

また、トレーニング前後が難しい場合は、1日のどかでゆっくり入浴できる時間を作れると良いでしょう。

 

いかがでしたか?

これから暑くなる前に、なるべく体をならしておくと、夏の試合や練習でもパフォーマンスを維持できるでしょう。

また、暑熱順化する際には、いつもより汗の量が多くなっているので、普段以上にしっかりと水分補給をすることも重要です。

 次回は、暑熱対策のための水分補給について、ご紹介します。

 

 

※暑さ指数とは(WBGT)

熱中症を予防することを目的に提案された指標です。単位は気温と同じく、摂氏度(℃)で示されますが、その値は気温とは異なっており、①湿度、 ②日射・輻射(ふくしゃ)など周辺の熱環境、 ③気温の3つを考慮した指標です2)

 

1)環境省,夏季のイベントにおける熱中症対策ガイドライン2020, 2020年.

2)環境省,熱中症情報サイト, https://www.wbgt.env.go.jp/wbgt.php

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河村亜希

・管理栄養士・公認スポーツ栄養士・IOC Diploma in Sports Nutrition・オーストラリア国立スポーツセンター(AIS)アシスタントスタッフ(2016年~)・全日本スキー連盟ハイパフォーマンスサポートスタッフ(2016~2018年)・日本バレーボール協会 医科学スタッフ(2017~2021年)・日本スケート連盟フィギュアスケート部医科学スタッフ(2020年~現在)などの日本代表チームに対する栄養サポート経験等を経て、現在は大学で研究活動にも取り組んでいる。

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