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【持久系・審美系種目のアスリート】よく見られる栄養面の課題とは
2020.12.28(更新日2021.08.17)

 

長距離陸上などの持久系種目や新体操、フュギュアスケートなどの審美系種目のアスリートの体型にはどのようなイメージがあるでしょうか。

細い、脂肪がない、美しい、しなやか・・・などの特徴を挙げた方が多いかもしれません。

これらの競技種目のアスリートは、体重や体脂肪率がパフォーマンスに影響するためウエイトコントロールを厳格に行っています。

そのため運動やトレーニングで消費されたエネルギーを食事から十分に補えていない「エネルギー不足」の状態が多くのアスリートに見られます。

今回はエネルギー不足の状態が、競技やパフォーマンスへ影響するだけでなく、健康面へのリスクについてもお伝えいたします。

 

【重要課題】エネルギー不足

ハイパフォーマンスが要求される様々な種目のアスリートにおいてもエネルギー不足が問題となっておりますが、特に持久系・審美系種目のアスリートでその割合が多くなると報告されています(Weiss & Hecht 2016)。

 

エネルギー不足の状態が長期化した場合、RED-Sを招き様々な生理的機能が抑制され、健康やパフォーマンスにネガティブな影響を与える恐れがあります(Mountjoy M et al. 2014)。

◆RED-S:スポーツにおける相対的エネルギー不足

月経、骨の健康状態、免疫、代謝、心血管系、成長・発達などへのネガティブな影響

RED-Sは女性アスリートに限らず、男性アスリートにおいても起こりますので、全てのハイパフォーマンスなアスリートが注意する必要があります。

2014年に国際オリンピック委員会により「スポーツにおける相対的エネルギー不足 (RED-S) 」の概念が提唱された。

Mountjoy M et al., The IOC consensus statement: Beyond the Female Athlete Triad–Relative Energy Deficiency in Sport (RED-S). Br J Sports Med 48:91–497, 2014.

 

エネルギー不足状態が長期化すると体重が減りますが、そこで「よし!ダイエット成功!」 と安易に喜んではいけません。

特に極端な体重減少を行うとRED-Sのような健康面への様々な悪影響が出る可能性があるので注意が必要です。

 

対策

エネルギー不足が疑われたら、次のいずれかの方法で対処します。

◆徐々にエネルギー摂取量を増やす

◆活動量を減らす

練習メニューを変更することが現実的ではない場合も多いため、「徐々にエネルギー摂取量を増やす」を選択する場合は、エネルギー源となる炭水化物、たんぱく質、良質な脂質を適切に摂りましょう。

 

よくある質問

「減量目的で糖質制限はした方がいいの?」

食事法に正解も不正解もありません。自分に合っているかどうかが判断基準となります。

 

しかし、糖質制限をする前に考慮しないといけない点は、

「糖質制限=エネルギー制限」と、単純に考えるべきではない

ということです。

単に糖質を制限していて、脂質やたんぱく質の摂取量を増やさない場合にはエネルギー摂取量がマイナスになるため短期的な減量は成功するかもしでません。

しかし、長期間にはエネルギー摂取量がマイナスになってしまうことで、RED-Sのリスクが高まります。

 

パフォーマンスUPを目的として取り組んだ糖質制限(減量)であったとしても、身体に悪影響が出てしまっては目的達成には繋がりません。

 

糖質制限をどうしても開始したいときは、専門家の助言も参考に、エネルギー不足を避けながら慎重に取り組むようにしましょう。

 

河村

ウエイトコントロールは正しい知識を持って取り組みましょう!

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河村亜希

・管理栄養士・公認スポーツ栄養士・IOC Diploma in Sports Nutrition・オーストラリア国立スポーツセンター(AIS)アシスタントスタッフ(2016年~)・全日本スキー連盟ハイパフォーマンスサポートスタッフ(2016~2018年)・日本バレーボール協会 医科学スタッフ(2017~2021年)・日本スケート連盟フィギュアスケート部医科学スタッフ(2020年~現在)などの日本代表チームに対する栄養サポート経験等を経て、現在は大学で研究活動にも取り組んでいる。

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